自他ともに求める生粋のマンガジャンキーである僕の選んだ、
「死ぬまでに一度は読んでほしいマンガ」を紹介するページです。
ジャンルやターゲットは一切不問。
僕の独断と偏見100%で、絶対に後悔のない、永遠に読み返せると太鼓判を押せるくらい面白いものだけを厳選してお送りしていきます。
それではさっそく、いってみましょう!
喧嘩商売(完結済/全24巻)
喧嘩においてはあらゆる卑怯な手段で、勝利を至上としていた負けナシの男、佐藤 十兵衛。
ある日、ヤクザの用心棒をしている怪力男・工藤に出会ったことで、彼の運命は大きく変わり始める…
超現実主義に基づいた、「何でもアリ」の格闘漫画です。
従来の主人公像と一線を画す、最高に卑怯で狡猾な男、佐藤 十兵衛の巡らす謀略こそが最大の魅力。
対戦中の思考戦はもちろん、試合前の仕込みにもフォーカスしている部分が特徴的。
対戦カードを得るという大前提から、思考操作、協力者の配備、ドーピングetc…
十兵衛はとてつもなく頭の回転が早い上、舌戦でも見事な手腕を披露します。
相手を巧みに煙に巻き、型にハメる。
その様式美は、自他共に認める卑怯・オブ・卑怯。
とにかく勝つためなら何もかもをやるという姿勢が、少年マンガにありがちな「気合や友情でパワーアップする前時代的なヒーロー像」を真っ向から否定。
目突き、金的、噛みつきに毒や仕込み武器。
勝った者の弁は何よりも優先され、敗ける者の言は遠吠えに過ぎない。
もはや常軌を逸した勝利への執念が、考えられないような策謀を次々に繰り出していきます。
一打一打にも、リアリティと緊張感を好む方に最適な作品ですね。
イイ子ちゃんな主人公に飽き飽きしている、というアナタにオススメ。
喧嘩稼業(連載中)
工藤との再戦を望む十兵衛は、田島の主催する「陰陽トーナメント」への出場を決意。
出場枠を強引に奪い取るために十兵衛が選んだ方法は、「東洋のフランケンシュタイン」と呼ばれる不死身のボクサー、石橋 強をトーナメント寸前に襲うことだった…
前作「喧嘩商売」に続いてタイトルのリニューアルされた本作。
物語は完全に地続きで、十兵衛が「陰陽トーナメント」の出場枠を奪い取ろうとする場面から始まります。
本来なら一介の高校生には勝ち取れないはずのトーナメント出場権。
冒頭から十兵衛は、驚くほど周到な手段で石橋をワナにハメます。
更にトーナメント出場者は、日本屈指の猛者揃い。
地力でひと回りもふた回りも劣る十兵衛ですが、闘いはリング外でも始まっています。
虎視眈々と罠を撒き、思考を操り、時には出場者同士で協力体勢を結ぶ。
陰側のトラップマスターとも呼べる十兵衛の行動が、相も変わらず痛快で気持ちいいです。
個人的には、対佐川 徳夫戦はこれまでのベストバウト。
圧倒的に格上相手に、持てる全ての裏ワザを叩き込んだ試合でした。
「卑怯者…」「ウケる」
ヘルシング(完結済/全10巻)
英国の治安を影で守る「王立国教騎士団」こと、HELLSING。
跋扈する吸血鬼を夜な夜な狩る彼らの切り札は、同じくバンパイアであるアーカードという男だった。
ある夜、婦警のセラス・ヴィクトリアは夜の眷属によって瀕死の重傷を負う。
彼女はアーカードの気まぐれを受け、配下として生きることを決意。
その夜、新米吸血鬼がまたひとり、新たな生を受けるのだった…
吸血鬼モノで言えば、個人的にはナンバーワンの鉄板作品。
ストーリーライン自体は、「強い敵が出る➡ヘルシングがやっつける」の繰り返しであるものの、しかしそのディテールは強烈。
地上最強の吸血鬼であるアーカードが、とにかくひたすらカッコイイんです。
どういうカッコよさかと言えば、それはまさしく「禍々しく屈折した狂気の権化」
タイプで分けるなら、完全に闇属性です。
「拘束制御術式クロムウェル」なんて、もう名前だけで厨二病患者は恍惚となってしまうでしょう。
またライバルとなる神父「アンデルセン」は、こちらもまた狂気的なカッコよさとシブさを醸し出しています。
キャラの個性もそれぞれ強く、敵も味方も味のあるヤツらばかりです。
ドリフターズ(連載中)
死の際に不思議な力によって、怪しげな世界で出会った島津豊久・織田信長・那須与一。
時代も背景も異なる三人の男たちが異世界でやることといえば、国奪り。
かくして魔物や妖術のはびこる不思議な世界に、「ドリフターズ」が結成されたのだった…
「ヘルシング」の完結後に、満を持してリリースされた平野耕太氏の新作。
世界中の偉人が呼び寄せられた並行世界で、とてつもない規模の国盗り合戦が行われる内容になっています。
歴史上で行方不明になった者が属するのが「漂流物」、非業の死を遂げた者が「廃棄物」に分かれるのが特徴。
歴史オタクには垂涎となる、時代/国籍不問の群雄割拠が見られます。
僕個人で特にお気に入りは、みんな大好き、織田信長。
本作では智に長けた参謀として、時に熱く、時に血も凍る冷血として異世界の勢力図を下剋上していきます。
その他過去の偉人たちがオールスターで揃い踏みであるため、夢のようなタッグマッチが開催されます。
例えば「漂流物」の総大将・島津豊久は、「廃棄物」の土方歳三(新選組)に勝手に遺恨を持たれています。
(土方は薩摩藩士に恨みがある)
しかしもちろん、歴史に疎い方でも楽しめるように充分配慮されているので、国内外の史実に興味がなくても手に取れる内容ですよ。
というか逆に、これを読むと俄然歴史に興味が湧くと思います。
そういう意味では、学生や子供にこそ読ませたい一作かも?
シグルイ(完結済/全15巻)
時は寛永6年。駿河城内にて行われた、真剣勝負による御前試合。
第一回戦で相対するは、片腕を失った剣士「藤木源之助」対、盲目の剣士「伊良子清玄」であった。
物語は、彼らの間に積みあがった並々ならぬ怨恨の原初へと立ち返ることとなり…
1956年に掲載された短編小説、「駿河城御前試合」の第一試合をマンガ化した作品。
江戸初期の太平の世で、掟破りの真剣試合を徳川忠長が城内にて開催します。
(平和な世の中では、優れた剣士同士に真剣で仕合わせるのは損失と考えられていたため)
すべてのカードは因縁のある者同士で、公式の場にて相手を合法的に殺害しようと目論んでいます。
ふたりの主人公「藤木源之助」と「伊良子清玄」は、もとは同じ”虎眼流“の同門。
切磋琢磨する間柄だった彼らが、なぜ互いに憎しみ合い、腕をもがれ、光を失い、足を引きずるようになったのか。
圧倒的に血生臭く、残酷で、救いようのない物語が詰まった作品になっています。
また破損表現なども含めて気分を害することもおおいにあるため、ショッキングな内容が苦手な方には勧められません。
しかし非常に秀逸に描かれる当時の死生観や、理不尽な世の理、抗えない運命の定めなど、心を大きく動かす要素がこれでもかと胸を揺さぶります。
個人的には、後世に残すべき名作だと感じています。
最強伝説 黒沢(完結済/全17巻)
44歳になった黒沢。建設会社の作業員として黙々と勤務してきた彼だったが、人生にどん詰まりを感じていた。
人望を、青春を、胸に灯る熱い何かを。
零してきたすべてを取り戻すため、黒沢の戦いが静かに始まった…
ご存知、福本伸行先生の一作。
うだつの上がらない中年・黒沢が、無為に失われていく日々に焦燥感を感じ、自らの人生を色鮮やかに塗り替えたいと願うストーリーになっています。
ある時は仲間の尊敬を得るためだったり、年甲斐もなくモテたいという欲望のためだったり。
胸の奥にくすぶりを感じる人ほど多くの共感を得られるシナリオで、時には思わず涙を誘うようなシーンも。
恐らくこの作品は、黒沢と同じ独身の同年代にこそ刺さる内容だと確信しています。
笑いあり、涙あり。
失敗だらけのどうしようもないオジサン黒沢が、それでも人生を変えるために闘っていく姿には心を打たれるでしょう。
監獄学園(完結済/全28巻)
今年度より女子高から共学へと変わった私立八光学園。
キヨシ含む五人の男たちは、1000:5のハーレム状態に希望を膨らませていた。
ある日彼らは女子風呂を覗いた罪で「裏生徒会」に囚われ、一ケ月の懲罰房入りを命じられる。
青春と濡れTコンテストを掴むため、キヨシらは密かに策略を巡らせるのであった…
ちょいエロとバカバカしくて笑える作品の殿堂といえば、監獄学園です。
校内に監獄がある特殊な学園が舞台で、そこからの脱獄を目指すのが物語の主軸となっています。
とはいえ「大脱走」や「プリズンブレイク」のようなシリアスさは皆無で、肩の力を脱臼するぐらい抜けるコメディタッチで描かれます。
特徴は、個性ムンムンなキャラクターの魅力。
不要なモブはほとんど居らず、誰もが明確な背景と考え方を持ってそこに存在しています。
女の子がみんなカワイイのもいいところ。
それも髪型や髪色を変えただけのテンプレフェイスではなく、ちゃんと別々のDNAを吹き込まれています。
「そうはならんっしょ!」というツッコミを思わず心に浮かべさせる、可笑しくてちょっとエッチなハイスクールコメディの金字塔ですね。
RaW HERO(連載中)
就職活動中の千秋は、ひょんなことから”JMT”と呼ばれる、国家主導のヒーロー組織にスカウトされる。
給料の良さにつられて入隊を希望した彼だったが、その任務内容は「怪人組織に女装して潜入する」という、残酷なまでに過酷なものとなっていった…
「監獄学園」完結後にリリースされた、平本アキラ氏による待望の新作。
相変わらずのちょいエロあり、笑いありのブレないスタンスです。
女の子がカワイくてセクシーなのはもちろんのこと、今作では男も愛くるしいのが特徴。
女装した千秋は当然のこと、作中でもっとも癒しをもたらす天使は、千秋の弟である小学生の千夏くんです。
むろん作画だけでなく、ストーリーラインもきっちり描かれており、流石の平本アキラクオリティと呼べるでしょう。
エロに全振りで話の内容がおざなりの手抜きマンガとは、一線を画す内容を期待してください。
ビン~孫子異伝~(完結済/全21巻)
時は中華戦国時代。祖先に孫子兵法書を記した「孫武」を持つ、孫臏と呼ばれる男が居た。
膝の骨を抜かれ、顔には罪人を示す刺青。
一見しておよそ人には劣る彼が、斉国に軍師として招かれるところから物語は始まる…
孫子といえば、歴史に疎い方でも一度は聞いたことがあると思います。
本作はその子孫にあたる孫臏の物語。
史実に基づく部分と、オリジナルのフィクションがミックスされています。
序盤は小さな戦をわずかな手勢でするりと勝ち抜く、兵法のいろはが示されます。
その後メインシナリオとなるのは、草原より侵略を目論む騎馬民族、狄戎との絶望的な戦。
およそ280000:4000という絶体絶命の不利を、策略によって戦っていく様を描いていきます。
歩兵ひとりひとりへのフォーカスなどもあり、思わず目尻がうるむようなシーンも満載です。
心の奥にある、熱いものをこみ上げさせるマンガと言えるでしょう。
ちなみに14巻で対談をした原泰久氏の「キングダム」と似た時代背景ですが、内容はまったくといっていいほど異なると思ってください。
進撃の巨人(連載中)
壁内で暮らす人類。壁の外には、人を喰らう巨人。
壁外を探索する調査兵団に入団したエレンは、ある日”超大型巨人”と”鎧の巨人”に遭遇する。
外界を隔てる壁を壊された時、人類の運命は大きく動き出した…
名前だけは誰もが聞いたことのあるであろう進撃の巨人は、ネームバリューに劣らず確かに面白いマンガです。
既存作品に当てはまらない”立体機動”を用いた巨人戦や、壁内で繰り広げられる王制政治。
現実とはまったく異なる世界観を非常に吟味して作り出しており、まさしくファンタジーとして楽しめる一作ですね。
インフラや壁内派閥、世論なんかの細かい部分もしっかり練られているので、粗が非常に少ないのも素晴らしい。
どちらかと言えば、キッズよりは大人が読んだ方がよりしっくり来ると思っています。
諫山ワールドでは、なんとなく展開の読めるシナリオがひとつもないのがスゴいところ。
ありきたりなフラグを全部折る、を徹底したプロットによって、1ページ後のドキドキ感がハンパないんです。
もちろん伏線もゴリゴリに仕込まれているので、要所でアハ体験がたっぷり感じられます。
「メインストリームすぎてなんかなぁ…」
「いまさら読んでも…」
と考えてるなら、かなりもったいないかも。
万人にススメられる、後世に残したい一作ですから。
ジョジョの奇妙な冒険 第7部 SBR(完結済/全24巻)
かつては競走馬を駆る天才ジョッキーと呼ばれた、ジョニィ・ジョースター。
とある事件で下半身不随となった彼は、ある日回転する鉄球を操る男、ジャイロ・ツェペリと出会う。
彼を追って参加したアメリカ大陸横断レース、「スティール・ボール・ラン」
ジョニィはレースを通して、失ったものを取り返そうと足掻くのだった…
ジョジョシリーズはどれも甲乙つけがたい出来ばえで、可能なら全部を推奨したいくらいです。
その中であえて一番を選ぶとするなら、僕はこの第7部”スティール・ボール・ラン“を選びます。
これまでのジョジョが日常や旅路、逃避行を描いたのに対し、今作はたったひとつのレースだけが舞台。
世界観自体はこれまでと別軸の、パラレルワールド扱いになっています。
そのため「今までジョジョを読んだことがない」という方でも、まったく問題なく物語に没頭しやすい仕組みになっています。
ジョニィ・ジョースターの魅力は、天狗になったクズ野郎が打ちのめされ、そこから希望に向けて這い上がる姿勢にあります。
足が動かせないというハンディキャップに苦しみながらも、レースを続けていく姿は心を打つものがあるでしょう。
また第7を完璧に楽しむなら、第3部を見ておくと更に感慨深くなります。
というかやっぱり、他の部も全部読んでほしいのはジョジョファンとしての願いなんですけどね(笑)
HUNTER×HUNTER(連載中)
父親に会うために、プロハンター試験を受けることになった少年ゴン。
あらゆる富と名声の象徴であるハンター資格の取得には、相応の困難が待ち受けていた。
試験の中で出会った仲間たちと共に、ゴンは幾多の試練に立ち向かっていき…
リリース以来マンガファンたちを虜にしてきた、ハンター×ハンター。
圧倒的に大きな世界観と膨大な登場人物に定評があります。
本作最大の見どころは、なんといっても心理戦。
“念“という超能力を用いた読み合いのバトルを一度味わえば、もはや他作品の小突き合いは児戯に見えてしまいます。
このマンガにインスパイアを受けたと思われる作品はたくさんあり、能力系バトルの礎を築いたと言っても過言ではないでしょう。
あらゆる人物には行動理念が用意されており、それらひとつひとつが複雑に絡み合う様子はもはや様式美。
ネット上には膨大な数の考察が記されており、それだけ深く広い富樫ワールドが確立していることを示しています。
週刊少年ジャンプと聞くと子供向けに思えるかもしれませんが、内容自体はかなりハードコアで知的。
むしろ成熟した大人の方が、より味わい深く楽しめるマンガにカウント出来るでしょう。
出会って5秒でバトル(連載中)
ある日死の際にあった白柳 啓は、突如として奇妙な施設に移送される。
そこでは似たような境遇の者が多数捕らえられており、また各々にひとつずつ「固有の能力」を授けられたという。
無事にもとの生活へ帰るには、向かい来る能力者をひねり潰すこと。
かくして啓は、この「ゲーム」を攻略することを決意したのであった…
上記「HUNTER×HUNTER」に恐らくインスパイアを受けていると思われる、能力系バトル漫画。
各々にひとつずつ割り振られた固有能力を使いながら、襲い来る危機を打ち倒す物語になっています。
かなり戦闘の読み合いは深く、また能力同士のシナジーやコンボも意識されているのが特徴。
簡単に自分の能力を自己紹介しちゃう系のツッコミ豊富なマンガとは違い、きちんとブラフを交えた情報戦を行うところが良いポイント。
登場人物も個性豊かで、頭が良すぎて若干のサイコパス風味を醸し出す主人公の啓はかなりいい味出してます。
ナヨッとした決断力のない主役にイライラさせられることの多い昨今で、ズバズバと行動力を見せる彼は見ていて気分がアガります。
そしてなんといっても、作中ヒロインのユーリちゃんは愛され要素満天。
こう見えて、ゴリゴリ最前線のファイターってところが良いですよね。
砂の栄冠(完結済/全25巻)
埼玉の名門県立、樫野高校の野球部ピッチャー・七嶋。
彼はある日後援会の老人、トクさんから個人的に1,000万円もの大金を預かる。
トクさんいわく、「このお金で甲子園の土を踏んでほしい」とのこと。
かくして七嶋は、誰にも知られずに大金を運用し、甲子園出場を目指す道を歩み始めた…
野球マンガは古今よりありふれたネタですが、本作はひと味もふた味も違います。
まず高校球児に求められる”清廉潔白さ”とは、七嶋は真反対の人間になることを求められます。
何故なら1,000万円を効率的に運用し、なおかつその事実をひた隠しにせねばならないからです。
ウソをウソで塗り固めた茨の道も、すべては甲子園球場へ至るため。
七嶋は木偶の監督と頼りない球友を率いて、本来なら絶対に不可能と思われる夏の甲子園へと挑んでいきます。
野球マンガではご法度みたいなセリフも、七嶋はガンガン(心の中で)言っちゃいます。
カネのチカラでアドバイザーを呼び寄せ、設備を整え、選手を鍛える。
キレイごとでは勝ち抜けない野球の世界を、腹黒なエース・七嶋が戦い抜く物語。
野球好きでない方にも楽しめるどころか、逆にファンでない方が面白い可能性アリ?
実際に僕はあまり野球を見ない方なのですが、このマンガはついつい引き込まちゃいましたからね。
嘘喰い(完結済/全49巻)
ひょんなことから出会った斑目 獏と梶 隆臣。
彼らは謎の老人が供するギャンブルを味わおうと、古びた廃ビルに立ち寄った。
しかしそこで行われていたのは、文字通り命を賭した”鬼ごっこ”であった…
命懸けのギャンブル漫画、嘘喰い。
倶楽部賭郎と呼ばれる組織を立会人とし、時に大金を、時に命そのものを賭け代として戦う内容になっています。
本作を文字で表すなら、「智と暴」がもっともふさわしいでしょう。
主にギャンブルパートとバトルパートが交互、或いは同時系列上で行われる物語は、非常にスピーディで緊張感をたたえています。
いずれも常人離れした展開が満載で、ダレる瞬間が少ないのも好印象。
およそハズレのエピソードが見当たらないくらい、秀逸かつ周到に構築されたプロットが常に楽しませてくれます。
暴を司りギャンブルの場を中立に提供する、賭郎の存在も魅力のひとつ。
独自のスタイルとルールを相当練り込んでおり、個性の塊のようなキャラクターがたっぷり登場します。
特に「號奪戦」システムは、男心に火を点ける作中の真骨頂。
こんなのアツくならないほうが難しいですわ。
魔法少女特殊戦あすか(連載中)
人類存亡を賭けた、地冥界とのディストニア大戦から3年。
魔法少女として冥獣王を打ち倒したラプチャー☆あすかは、今は一般の高校生として静かに暮らしていた。
もう二度と軍事活動には関わらない。そう固く誓ったのも束の間、世界は再び彼女を闘いの渦へと引き込んでいく…
「まどか☆マギカ」の放映以来、魔法少女を題材にした作品はかなり多くリリースされました。
その中でもとびきりハードコアで、残酷すぎる物語となるのが本作でしょう。
特徴的なのは、精霊や冥獣といったファンタジーが用いられる一方で、人類側の対抗策としてミリタリー要素もたっぷり詰め込まれていること。
軍事設定にアドバイザーを招いているだけあって、かなり設定面は現実に則した、意匠の凝らされたものと仕上がっています。
魔法少女好きだけでなく、ミリオタならマストバイと言えるでしょう。
キャラクターもカワイイですが、ポイントは彼女らがバリバリにCQCとかをこなしちゃうあたり。
用いる武術も空手、シラット、コマンドサンボなどなど。基本的に軍隊格闘術が多い印象です。
とはいえもちろん、魔法も使うのでご安心を。
中でも主人公のあすかは、カワイイ・強い・カッコイイの三拍子。
ややエグい表現も多々見られるものの、その面白さは折り紙付きと言えるでしょう。
孤独のグルメ(完結済/全2巻)
個人古物商を営むゴロー。
仕事の合間に空いた腹に、何かを入れるため今日も街を彷徨う…
実写化もされた人気作品、孤独のグルメ。
しかし映像版とマンガ版はまったくの別物と考えるべきです。
紙媒体の原作は、食事へのフォーカスはもっと低く抑えられ、漂う空気感を大切にしている傾向があります。
この作品、基本的に山ナシ・谷ナシ・オチもナシ。
喜怒哀楽を大きく揺さぶる表現は用意されておらず、流し見してしまうと「なんでそんなに話題になるの?」と不思議に思うかもしれません。
しかし奇妙な哀愁とシュールさが、異常な中毒性を引き起こす作品でもあります。
大阪のたこ焼き屋で浮きまくってしまうゴローちゃん。僕の大好きなシーンです。
ゴローちゃん自身は物静かで平凡な男なのですが、シチュエーションや心情のブレンドが絶妙で、読めば読むほど笑えてくるスルメ漫画です。
正味なところ、食レポ系マンガのような「おいしそう!」という飯テロ効果をこの作品に期待してはいけません。
孤独のグルメで味わうのは、あくまで空気感。おいしいのは空気なんです。
この奇妙で独特な世界に一度浸ったら、スルメリピートの魔力からはそうそう逃れられませんよ。
東京喰種トーキョーグール (完結済/全16+18巻)
馴染みのコーヒー屋で偶然出会った神代リゼという女性。
ある晩、金木 研は彼女と共にデートを楽しんでいたが、実は彼女は人間の血肉を糧とする、喰種と呼ばれる怪物だった。
だが食事とされる寸前に、付近のビルから鉄骨が落下。リゼは死亡し、カネキも重傷を負う。
やがてカネキが死の淵より目覚めた時、彼の身体にはリゼの臓器が無断で移植されていたのだった…
人を喰らう怪人、喰種と人類の対立を描いた作品。
カネキは人間から喰種になった唯一の存在であり、対立構造の中庸にしてキーパーソンとして語られます。
内容はバトルパートが多く、赫子と呼ばれる自己の細胞を変化させたものを扱う喰種、そしてそれに対抗すべく特殊な武器・クインケを使用する人間との闘争を描きます。
お遊戯でなく、命の奪い合いであるため、立ち合いでは常に緊張感のある対峙が見ることが出来るでしょう。
しかし東京喰種の本質は、戦闘行為そのものにはありません。
「どう生きるか?」「人の定義とは?」「何が正しいのか?」
ともすれば現実にも置き換えられるような問いかけを、我々は要所でメッセージとして受け取るでしょう。
物語の中では多くの出会いや別れが。
そしてカネキだけでなくすべての登場人物らが苦しみ、嘆く姿には心を動かされると思います。
GANTZ(完結済/全37巻)
酔っ払いを助けるため、地下鉄に轢かれて死亡した玄野と加藤。
目を醒ますとそこは、真っ黒な球の置かれたマンションの一室だった。
その日から彼らは、命懸けの点取りゲームに強制参加を強いられることになり…
東京の街で行われる、異星人とのサバイバルゲーム。
残酷さと過激さで、多くの物議を醸した作品になります。
登場人物らは味方補正抜きで容赦なく死んでいくため、毎戦が気の抜けないバトルとなっているのが特徴。
体面や意地をかなぐり捨てて、不格好でも生き残りたいと抗う姿がリアルさを描写しています。
そして作中の謎について考察するのも一興。
黒い球・ガンツの正体を、徐々に解き明かしていく過程は面白いものがありますね。
連載当時は、日夜ネット上や口コミでガンツについての議論が交わされたものです。
不気味な怪物たちと、黒いスーツを着た人間との抗争。
字におこすとありきたりに見えますが、実態は複雑で奇妙、そして刺激的です。
作品を魅力的に仕立てているのは、ひとりひとりに用意された背景と心根でしょう。
玄野はもちろんのこと、大方のキャラクターにはサイドストーリーが用意されており、彼らの人となりを知ることが出来ます。
善意に溢れた者、最強を目指す者、愛する人を守ろうとする者、狂気に満ちた者。
これらは星人とのバトルを単なる殺生劇にはとどまらせず、より味わい深いものへと昇華させています。
こうした細かい味付けによって、大きな話題を獲得する有名作品となったんでしょうね。
いぬやしき(完結済/全10巻)
ある晩、未確認飛行物体の墜落に巻き込まれて死亡した、犬屋敷と獅子神。
彼らは機械生命体として蘇生され、日常へ戻っていった。
やがて自らの人智を超えた力に気付いたふたりは、それぞれの道を歩み始め…
単純、ゆえに痛快。
いぬやしきのストーリーラインをひと言で説明すると、
「良いアンドロイドと、悪いアンドロイドの対立構造」
たったこれだけで済みます。
古来から使い古された善悪の二元性システムなのですが、しかしとにかく魅せ方がウマい。
オジサンが悪者にパンチしたり、怪我人や病人を救うだけなのに、不思議とまなじりに涙が浮かんでしまうのです。
ありがちなヒーロー像が疑問視される時代になったからこそ、逆に犬屋敷の見返りを求めない無償の奉仕は光って見えてしまいます。
主人公が、まったく冴えない老け顔の中年というところもポイント。
およそ普通の漫画家なら避けるようなキャラを据えることで、唯一無二の個性を獲得しています。
慣れるとなんだか、カワイく見えてくるふしぎ。
作画のクオリティもGANTZに引き続きさすがのレベルで、高品質なCGとのブレンドがキマってますね。
「ヒーロー漫画なんて…」と思わずに、一度は読んでもらいたい一作です。
ソウナンですか?(連載中)
修学旅行中に墜落したジェット機。
そこから命からがら無人島へ漂着した4人の女子高生たちは、生きるための奮闘を余儀なくされる。
父親と共に幼少よりサバイバル経験を積んでいたほまれは、生存のための新たなミッションを開始するのだった…
サバイバルのTipsを学びながら、カワイイ女子高生4人の奮闘を眺められる。
ひとくちで二度美味しい、とはこのこと。
遭難なんて自分とは縁がないとは思わずに、知識だけでも蓄えておくのはガチでオススメです。
ストーリー自体はゆったりしたもので、日々の生活術へのフォーカスが主軸。
今までこの手の作品に触れていない人ほど、「目からウロコ」な情報が満載だと思います。
水を見つけ、罠を仕掛け、素潜りで魚を突き、たき火に薪をくべる。
簡単そうで難しい、「ただ生きる」を目的にJKらが戦う姿は、思わず応援したくなっちゃいますね。
ディスカバリーチャンネルで、ベア・グリルスやエド・スタッフォードの番組を観ている方なら本作は絶対にオススメ。
「貴重なタンパク質」を提言する、新たな逸材が無人島をサバイブしているのですから。
そして要所で見られる、ほんのりエロスが絶妙なさじ加減。
あざとく狙った構図のものと異なり、あくまで必要に際している部分がポイント。
これこそ本当の意味で”ちょいエロ“に該当する作品だと思います。
「サバイバルには恥じらいは不要だ…!」
僕たちがやりました(完結済/全9巻)
いつもつるんでは遊びを繰り返していたトビオ・伊佐美・マル・パイセン。
ある日おふざけで作った爆弾で、彼らは高校を爆破してしまう。
死傷者を多数出した事件の首謀者であるトビオらは、罪の意識と戦うことを余儀なくされ…
登場人物、クズだらけ。
決して若気の至りとは割り切れないような、凄惨な事件が主軸となるストーリー。
タイトルの通り、4人の若者が高校を爆破してしまったあと、罪の意識に苛まれることとなります。
ですがそこは十代の若者。驚くほど軽薄で能天気、そして一貫性のない行動がさんざん読者を苛立たせるでしょう。
この”苛立ち”は恐らく原作者の狙い通りの効果を生んでおり、作品のキモでもあります。
そして「なんてバカな奴らだ…」と蔑む気持ちのある一方で、しかし自分らがこの年代の頃には、(お恥ずかしい話ですが)似たような思考能力だったことを思い返すきっかけにもなります。
性・罪・金。
人間の暗い業をテーマに、4人は愚かしく淫らで、バカらしい道を歩み始めます。
全編通して胸が苦しい、気分の悪いストーリーが展開されます。
欝々としたイヤな物語を、エンタメとして楽しめる人にはぜひとも読んでもらいたい作品ですね。
マージナル・オペレーション(連載中)
実態も知らぬまま、民間警備会社にオペレーターとして就職したアラタ。
ゲーム感覚でシミュレーターの指揮を出していたが、実際に兵士の生死を差配していたことを知る。
やがて戦地で指揮を執った少年兵らとの出会いが、彼を「子供使い」へと変えていくことになる…
人気小説の漫画化版。少年少女らの戦闘指揮を行う、「子供使い」の物語です。
体裁だけ切り取って見ると、子供を戦争に使うなど許されざる罪に見えます。
しかし冒頭から読み進めていくと、それが不可避で、なおかつ慈愛に満ちたものであることが見えてくることに。
子供らを守るために、子供らを戦わせる。
相反する矛盾を抱えながら、「イヌワシ」ことアラタは、時に車両を爆破させ、時に敵兵を射殺することを命じます。
帥の本領を見せるバトルパートだけでなく、地域ごとの政治情勢、組織間対立図、個人的な因縁などの豊富な要素が物語を彩ります。
そして鉛弾を用いた対話では、もちろん敵味方に被害が生まれます。
中には、見るのが辛くなるような悲しい事件も。
戦争と子供という、多くが扱いたくないであろうアンタッチャブルな題材。
それらを決して悪趣味な意図でなく描き得るのは素晴らしい手管に見えます。
現実にも則した問題であるだけに、目を背けるべきではない作品でしょう。
ゴブリンスレイヤー(連載中)
魔物の討伐を冒険者らに提供する、通称ギルドと呼ばれる機関。
そこに銀等級ながら、「ゴブリン」の退治しか受けないという変わり者の男が居た。
金にも名誉にもならない、いわば下っ端仕事を来る日も来る日も繰り返すのだ。
人は彼に畏怖と侮蔑を込め、こう呼んだ。
「ゴブリンスレイヤー」と…
とある遺恨により、世界中のゴブリンを狩り尽すと誓った男の物語です。
世界観はファンタジーで、悪魔や魔神、竜に精霊。不思議な生物がたくさん居る世界。
中には悪さをするものも多く、時には大規模な招集によって討伐隊が組まれることもあります。
しかしゴブリンスレイヤーはそうした”冒険者として栄誉ある依頼“にはまるで興味がなく、ひたすら延々とゴブリンだけを駆逐していきます。
まさにタイトルの通り、ゴブリン以外には目もくれないんですよね。
より恐ろしい「人喰い鬼」と遭遇した時も、名前すら知らない様子でした。
作中見どころは、ゴブリンスレイヤーの用いる的確な戦術による戦闘です。
彼の考える冒険者としての腕前は、華麗な剣技やド派手な大魔法でなく、油断なく冷静に、いかに効率的に最大量のゴブリンを殺せるか、に尽きます。
毒の塗布、矢じりの細工、盾や小剣の選択。
非常に現実的かつ理知的な彼の判断力こそ、この作品のキモと言っていいでしょう。
作中ではいわゆる「小鬼」タイプのゴブリンだけでなく、それを操るシャーマンタイプのゴブリンや、巨躯のホブゴブリン、または全く別次元の悪意ある怪物なども登場。
決して延々とザコを蹴散らして満足している内容ではないので、毎度毎度の依頼のたびに、「今回は全員無事か!?」とドキドキさせられるでしょう。
無能なナナ(連載中)
外界と隔絶された孤島の学園。
ここでは特殊な能力を有した子供らが、「人類の敵」と呼ばれる怪物との闘いに備え、日夜訓練に励んでいる。
ある日転入してきた柊ナナは、”人の心が読める”能力者。
彼女は屈託のない笑みと明るい性格で、たちまち学園の人気者になっていく。
しかし彼女には、誰にも言えない秘密と目的があった。
それはこの孤島の能力者たちを、皆殺しにするという任務である…
能力者バトル × 暗殺女子
本作はタイトル通り、「無能力」のナナが、驚くほど「有能」な手管でクラスメイトを皆殺しにしようと奔走する内容です。
能力者バトルがポピュラーになった現代で、あえて完全無能力な主人公である点がポイント。
ナナが人心掌握や自身の虚飾、また高練度の洞察力によって環境を操作し、ひとりずつ能力者を葬っていく様は、さながらスパイガールと呼ぶにふさわしいでしょう。
作中ライバルにあたるのは、同時期に転校してきたキョウヤという男。
自身の罪を巧く秘匿し続けているナナは、クラスメイトからは清廉潔白だと信じられています。
しかしキョウヤだけは、内心でナナこそが連続殺人の真犯人であると疑うことに。
互いに高次元の読み合いとブラフ合戦が展開され、推理小説のような場面も多々あります。
カワイイ絵柄からは想像出来ないほどの、頭を使った知能戦はハラハラさせてくれますね。
Dr. STONE(連載中)
ある日差したまばゆい光線によって、地球上のすべての人類は石化した。
それからおよそ3,700年後 ― 西暦5738年。
石化より目覚めた千空・大樹・杠は、失われた人類の文明を巻き戻すための闘いを始めるのだった…
理系が泣いて喜ぶ、科学がメインの漫画です。
滅びた人類の文明を再建するために、千空の科学に関する膨大な記憶で、あらゆるものを作り出していくのが見どころ。
火薬、電気、ラーメンに携帯電話。
一見してムリゲーな創造物も、知識とありったけのマンパワーで解決。
この作業工程が、メチャクチャ詳細なのもスゴイところ。
とはいえ千空も、何もかもをこなせる万能マシーンには遠く及びません。
体力は人並み以下で、ケンカは最弱。手先の器用さも人より少し秀でている程度です。
そこで光るのが、やはり仲間たちの存在。
登場人物の大半は何かしらの一芸に秀でており、千空いわく、「どんな奴も何かの役に立つ」とのこと。
それを体現したようなサイドストーリーが、これまたアツい。
思わず涙腺に訴えかけるようなものが、要所要所で挟まれます。
もちろん科学に疎い文系でも、十二分に楽しめることは保証されています。
そして恐らく読み進めるうちに、次第にテクノロジーへの興味が湧いてくることでしょう。
こんな役立つマンガ、子供に推奨したくなるに決まってますよね。
殺し屋 1 イチ(完結済/全10巻)
「ジジィ」率いる殺し屋たちは、とある暴力団の組長の部屋を訪れる。
それは泣き虫の殺し屋、「イチ」の仕事の後始末のためだった。
一方で組長を殺された若頭の垣原は、復讐のためにジジィたちを追うことを心に決める。
かくして歌舞伎町のヤクザマンションを舞台に、歪んだ男たちの狂気に満ちた抗争劇が幕を開ける…
究極のサドと究極のマゾの血みどろバトル。
発売当初、そのあまりの残虐性とショッキングな内容に物議を醸した一作。
元イジメられっ子の殺人マシーン・イチと、暴力を受けると愛を感じるヤクザ・垣原の戦いを描く内容になっています。
登場人物のほとんどが、目を覆いたくなるほどの凄絶な死を遂げる本作。
スプラッターじみたシーンもあるため、血が苦手な方にはオススメ出来ません。
ヤクザがらみの抗争ということで、殺人・拷問・強姦などが当たり前に描かれます。
また勧善懲悪シナリオではなく、純粋に悪 × 悪の対立構造であるため、イチに正義のヒーロー像を投影することは出来ません。
というよりも、作中でもっとも邪悪で気味が悪く、手の付けられない怪物はイチですからね。
本編を読むと、この意味は分かるはずです。
驚くほど独創的で唯一無二の個性を持つキャラクターが多く、互いの練り込まれた背景同士が織りなすストーリーラインは、見る者を圧倒します。
龍のヒモ談義や、双子の半身への想いなど、かなり特殊で変わった独自理論が展開されるのも面白いところ。
残虐描写に慣れている方には、ぜひとも一度読んでもらいたい作品ですね。
闇金ウシジマくん(完結済/全46巻)
小さな闇金業者を営む丑嶋。
貸し付けと取り立てで金を稼ぐ日々だったが、それは決して楽な道でもない。
時には踏み倒し、時には夜逃げ、そして時にはヤクザによるせびりが彼の前に立ちはだかり…
闇金業者をマンガ化した作品。
借金とは無縁の者にはこれまで知ることの出来なかった、闇金融の実態が赤裸々に描かれます。
営業、貸付、取り立て、金主への返済…
うまい汁だけを吸っていると思われがちな闇金業者ですが、彼らもまた搾取される側。
特にヤクザ絡みのエピソードでは、苦渋を舐めさせられる丑嶋を見ることになります。
そして本作最大の見どころは、救いようのない債務者の姿です。
多くはギャンブル依存を抱えており、彼らは朝令暮改よろしく、悔いてもすぐに忘れ、次々に持ち金を溶かしてしまいます。
現代日本の闇を映したような、うすら寒いものを感じる場面が非常に多い印象ですね。
しかし多くのエピソードが気分の悪い締め方をするのに対し、時折ほんのりとハッピーなものも含まれることも。
それらは普段とのギャップもあいまって、何だか輝かしく見えてしまうのです。
火の鳥(完結済/全16巻)
その生き血と肉を喰らった者には、永遠の命が約束されるという幻の生物、火の鳥。
あらゆる時代で人々はそれを求め、争い、憎み合い、滅ぼし滅ぼされる。
果たして不老長寿を得た者たちは、幸せな未来を掴むことが出来るのだろうか…
手塚治虫の代表作、火の鳥。
古い作品のために敬遠しがちですが、現代でも充分通用する傑作です。
本作は未見の方には想像も出来ないでしょうが、大半のエピソードがこれ以上なくむごく残酷で、救いようのないバッドエンドばかりを迎える鬱作品です。
短いオムニバス形式で、時代も場所も異なるキャラクターたちが、共通して遭遇するのが火の鳥。
石器を持った古代から、文明の発展した近未来まで。
色々なシチュエーションで、誰もが不老不死を勝ち取ろうと夢を見ます。
現代科学を反映したような内容。手塚先生、未来に生き過ぎですわ…。
人間の業や罪を描写する場面が多く、現代で発行されれば間違いなく問題視される内容が多々ある本作。
しかし漫画カルチャーの礎を作った時代の代表ともいえる作品であるため、「我こそはマンガ通」を自称するのであれば、一度は目を通すべき一作とも言えます。
ゴールデンカムイ(連載中)
元・日本軍兵の杉元は、カネを手に入れるために北海道で砂金掘りをしている。
彼はある日、8億円相当の金塊のウワサ話を耳にする。
いわくその金塊の在り処を示す地図は、脱獄した凶悪な囚人らの身体に刻まれた刺青に記されているという。
偶然知り合ったアイヌの少女アシリパと共に、金の塊を探す旅が始まろうとしていた…
日露戦争後の北海道を舞台に、金塊の奪い合いを描くサバイバル系作品。
「不死身」と呼ばれるほど打たれ強い杉元と、勇敢なアイヌ猟師を父に持つアシリパとのタッグが本作最大の魅力です。
対抗勢力との緊張感あるバトルが描かれる一方で、笑いを誘うひとコマも抜かりなく差し込んでくる緩急の巧さ。
人気作品の名に恥じない、間違いなく面白いと太鼓判を押せる一作です。
ゴールデンカムイを語る上で外せないのが、
異様にうまそうなアイヌ飯と、思わず吹き出す顔芸、そして味噌をオソマと言い続けるアシリパさんの天丼芸です。
特に食事シーンでは見事な食レポが挟まれるため、もれなく飯テロ効果で腹が減ります。
深夜に目を通すと腹が肥える可能性があるため、手の届く範囲にスナック菓子は厳禁です。
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