マンガ版【鬼滅の刃】にて、思わず涙を禁じ得ない名場面・名セリフを集めたページです。
人にも鬼にも何らかのエピソードが用意されている本作。
その中でも特に印象深く感銘を与えたシーンを、トップ10形式でお送りしていきます。
それではさっそく、いってみましょう。
10位:生殺与奪の権を他人に握らせるな
鬼に家族を皆殺しにされ、その上、唯一生き残った妹までも怪物になるという絶望。これ以上にない悲劇です。
そこで炭治郎が額を雪に押し付けて禰豆子の命を懇願するさまを、普通なら感慨深く眺めてしまいそうなものです。
しかし冨岡義勇には、そうあるべきでないと分かっていたのでしょう。
いま立ち上がって拳を握らなければ、これから先、ずっと俯いたままで生きていくことになると。
ある意味で究極の悪役を受け持ったこのシーン。
炭治郎の生きる意味を問い、気構えを持たせ、先達として導く。
そういった彼の心が詰まった、印象深い一喝の場面なのでした。
9位:継国兄弟の対峙
無残によって鬼と化した黒死牟と、最強の剣士・縁壱の再会。
分かたれた兄弟の縁が、もっとも望まぬ形の邂逅を果たしてしまいます。
始まりの剣士として呼吸を世に広めた男たちですが、その征く道はまったく異なるものとなってしまいました。
誰よりも優れた弟と、それを羨んだ兄。
非の打ち所がない人間の影となることが、苦しみにまみれたものであったことを物語っています。
対して縁壱も、決して悩みのない生涯であったとは言えません。
家族から鬼を生み出してしまうことは、鬼殺隊であるならなおのことでしょう。
それでもなお、彼の懐には、兄から貰った宝物の笛がしまい込まれていました。
たとえ鬼に転じても、彼は幼少からずっと兄を慕っていたんでしょうね。
「お労しや 兄上」
涙を流す老剣士の姿は、心に迫るものがあります。
8位:結核の青年
魘夢の口車に乗り、炭治郎の夢に侵入した結核の青年。
病に苦しむ現実から逃れようと鬼の手先と成り果てるも、優しい心を取り戻して改心します。
無意識領域にある精神の核は、本来なら絶対に他者に触れさせてはならない大事なものです。
現に炎柱の煉獄は、夢に陥りながらも本能的にこれを守護しました。
ところが炭治郎の無意識領域に存在する光る小人は、なんと結核の青年を自ら精神の核へと導いてしまいます。
これは炭治郎の心根そのものを表した、非常に興味深い現象でしたね。
自分よりも他人を優先する、優しすぎる男。それが竈門炭治郎なのです。
7位:責任を取った爺ちゃん
かつて鳴柱と呼ばれた男、桑島慈悟郎。
現在は引退し、今では育手として善逸、そして獪岳の両名を後継者とし、雷の呼吸の未来を託しました。
しかし力への歪んだ欲望をむき出しにした獪岳は、鬼殺隊を裏切り、鬼に転化することを決意。
上弦の末席を拝領すると、善逸の前に敵として立ちはだかりました。
自らの門弟から逆徒を排出したことに責を感じ、桑島はひとり腹を召して、この世を去りました。
それを善逸が知ったのは、一通の手紙。
彼が感じた途方もない怒りと喪失感は、筆舌に尽くし難いものがあったでしょう。
これまでは眠らないとロクに戦えなかった善逸が、自らの意思で兄弟子を葬るシーンは感慨深いものがありましたね。
6位:不死川兄弟の過去
不死川兄弟が袂を分かつきっかけとなった事件。
鬼と化して家族を襲う母、それを殺した兄と、責める弟。
どう転んでも不幸せしかもたらさない、最低最悪の鬼による被害です。
風柱・不死川は弟が鬼殺の宿命に囚われることを恐れ、「自分に弟は居ない」と公言するように。
愛想がなく狂人ぶった無頼漢に見えて、家族を想う気持ちはこの頃から少しも変わっていなかったんですね。
これも竈門一家との対比のような一面があり、仮に禰豆子が人を襲う化物となっていれば、炭治郎はそれを命懸けで止める必要があったでしょう。
たまたま運良くそうならなかっただけで、悲劇的なストーリーはすぐ側にまで迫っていたということになります。
5位:煉獄の死
乱入した猗窩座との死闘の末、命を落とした炎柱・煉獄。
弱卒たる後輩らの盾となり死にゆく最期の時も、ひとつの愚痴も怨み言もこぼしませんでした。
むしろ先だって彼らの模範となれることに、誇らしさすらも感じているような笑みを浮かべていたことは忘れられませんね。
遺言では齢若い弟や、落ちぶれてしまった父を気遣う一面も。
他の柱の面々も、彼の死は正面から受け止めるには重すぎました。
それほどに腕が立ち、また人柄もまっすぐな男だったのです。
4位:遊郭の兄妹
侍の目をかんざしで突いてしまい、報復に生きたまま焼き殺された梅。
兄の妓夫太郎は神と仏を呪い、鬼と化して人の道を外れることを選んだのでした。
この物悲しいエピソードは、鬼に堕ちた者らの中でも群を抜いて目立ちます。
望まれない厄介者の兄、見目麗しくも心が貧しい妹。
鬼として彼らが犯した罪は擁護することなど出来ませんが、少なくとも人間であった頃の彼らは憐れで、同情に値する生い立ちを持っています。
作中では兄弟姉妹、そして家族の絆についての対比が、竈門兄妹へ何度も突き付けられます。
同じような境遇に瀕していた炭治郎が、妓夫太郎のような未来を辿らなかったのは必然でしょうか?
仮にほんの少し歯車が噛み違えば、これは炭治郎と禰豆子の物語だったのかもしれません。
ちなみに作中で梅の名前の元となった病気というのは、『梅毒』
当時は治療も芳しくなく亡くなることの多かった、代表的な性病です。
こんな名前を貰った彼女を不憫に感じても、それは人として誤ったことではないでしょうね。
3位:俺はお前たちと違う
「俺はお前たちとは違う」
そう言い、他の柱と距離を置いていた冨岡義勇。
一見すると誰をも見下しているようなその態度ですが、真相はまるで異なるものでした。
かつて鱗滝のもとで共に修練に励んだ同胞・錆兎。
誰よりも優秀な友が自身を犠牲にして、最終選別を生き残らせてくれた。
義勇の中には彼の死がいつまでもこびり付いて離れず、同時に弱い自分を責め続けることに。
水柱となった今でもなお、自分が鬼殺の隊士に相応しくないと考えていたのです。
これまで人を寄せ付けない態度を保っていた義勇の過去が明らかになり、彼の自己への過小評価が原因であったことが判明するシーン。
冒頭1巻でも炭治郎と繋がりのあった錆兎のエピソードだけに、感極まるような一場面でしたね。
2位:おはよう
陽の光を克服し、朝日を浴びて兄に「おはよう」と呼びかける禰豆子。
もう叶わないかと思った陽光の中での再会でした。
半天狗に襲われる刀鍛冶たちと、夜明けの迫る禰豆子の身。
選べない二者択一に惑う炭治郎を、自らを犠牲に振り払った禰豆子が泣かせますね。
もう塵になって消えてしまったと思ったのは、炭治郎だけでなく読者も同じでは?
これ以降、簡単な単語で会話を交わせるようになる彼女。
善逸の喜びようが、とてつもないものと化しました。
1位:鱗滝の手紙
禰豆子が人を襲わない鬼であることを示すため、鱗滝と冨岡が命を賭すシーン。
仮に彼女が人間を手にかけた時は、腹を召して詫びを入れると宣言しました。
たかが行き倒れの兄妹。
そんな彼らを元柱、そして現行の柱であるふたりもの人間が、自らの腹を引き換えに担保するという決意表明。
その意思を目の当たりにした炭治郎は、たったひとり、涙を浮かべていました。
共に幾年かを暮らした鱗滝はまだしも、ろくすっぽ面識も無い義勇までもが命を賭すことは、さぞ炭治郎には驚きで、そして有り難いことだったでしょう。
他の柱にはなんてことない酌量の手紙でしたが、それは竈門兄妹にとってはまるで違う意味を持つ、何よりも暖かい文だったのです。
アニメ版は上記リンクからどうぞ。
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